妊娠だけしたい人の例

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私のクリニックは、不妊症専門である。つまり、長年子宝に恵まれなかった女性が、なんとか出産できるように願って来診するところなのだ。
ところが、ときたま妙な患者が迷いこんでくる。C子さんは、その典型だった。
「あんまり子どもは欲しくないんです。でも、とにかく一度でいいから、なんとか妊娠だけしてみたいんですよ」
あきれた話だ。これでは診察や治療のやり甲斐がない。第一、受胎という神聖なものを何と心得ているのか、と叱りつけたくなってくるではないか。
「子どもがなくても幸せなんです。でも、妊娠したときの喜びについて、本によく書いてるでしょ。あれを私も体験してみたいから・・・」
「妊娠して、あとはどうするつもりなんです」
「それは、また、そのときに考えますから・・・」
私は次第に腹が立ってきた。時計の修繕を注文して”故障がなおったら、またこわすかもわからん”と言っているようなものではないか。
私は、このままお引き取り願うことにした。
自分を作り過ぎずに、素敵なパートナーを見つけよう。
が、C子さんは粘った。なんとしてでも「妊娠できる」ことを証明させてほしい、と食い下がった。
女性にとって妊娠は幸福への一里塚だ、というのが我田引水ながら私の持論である。
その点で、避妊もしていないのに何年も妊娠しないC子さんは、不幸だったといえるのだろう。
「ええ。はじめは意識しなかったですけどネ、六年、七年とたってきて、私は欠陥女かいなと思うようになったんです。

参考:

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