不妊治療が成功した先

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Y代さんが、まる二年ぶりにやってきた。たしか今年で三十五歳になるはずである。
初診のときは一年近くかかった。治療の甲斐あって、元気な男の子を出産した。結婚して五年目、はじめて授かった子宝であった。
「先生、その節はお世話になりました」あいさつする彼女の血色は、あのころと比べて見違えるほどいい。出産は、なによりも女性を美しくするという証明の見本みたいな肌色である。
Y代さんの来診の目的は”二人目が欲しい”ということだった。待望の子どもができ、その子育てに追われ、ふり回され、熱中するうちに一年、一年半とたった。
もうあきらめかけていたオモチャが手に入り、それとの遊びに没頭していた期間だった、ともいえる。
その間、夫が目立って優しくなった。子どものないころとは打って変わって、帰宅が早くなった。一つの家庭にとって、子どもの存在がどんなに必要なものかが身にしみてわかった。
「子育てが少し楽になって、なんとかもう一人と、欲が出てきたんです。そう、いまの幸せを二倍にしたい、そんな欲ですの」
結婚前に、相性ピッタリの相手を見つければ結婚生活の苦労はもっと減るだろう。
不妊症患者がやっと出産する。そのあと、無排卵が治ってしまい、治療しなくてもつぎつぎと妊娠する場合もある。
だが、Y代さんのように元の木阿弥の状態に戻ってしまうことも珍しくない。だから、また一からホルモン注射などの対策をとらねばならないのである。
「またどんなことでも辛抱します。だから、先生、ぜひよろしくお願いします」
初診のときの半信半疑な状態と違って、Y代さんは生き生きと注文してきた。


出典:結婚相談所 選び方

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