科学と不妊治療

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たび重なる検査の結果、卵管が詰まっていて、これが不妊の原因であろうという結論になる。
そこで本人や家族の了解を得て開腹手術をしたところ、なんと、詰まっていた原因がいとも簡単なものだったという例がある。
逆に、いったん詰まっていないと診断したのに、経過観察の結果、実際は詰まっているのとほとんど同じような状態だったため、結局は手術したこともある。
もちろん、事前に予測したとおりであることが圧倒的に多いけれど、ほんとのところは、開腹して肉眼で見るまでわからないということだ(腹腔鏡というものでも診ることはできるが、これも開腹手術と同じ程度のリスクがある)。
月世界の様子まで明瞭に写し出せる科学万能の時代なのに、人間のお腹の皮の下せいぜい5~10センチぐらいのところが、超音波断層写真を駆使しても明確につかめない。
まことに、もどかしいことである。
あなたは出会った人に対して、自分の理想を演じずに本当の自分をぶっちゃけられますか?
四年間も子宝に恵まれないZ子さんが私のところへ現れたのは三十二歳のとき。
いろんな婦人科医を回ったあと、ある病院で「あなたは卵管が詰まっているが、手術は非常にむつかしい状態にある。
もう子どものことは諦めて、なにか趣味の世界にでも楽しみをみつけるようにしたらどうか」と宣告された。
しかし『どうにも諦めきれず、一年たってから再挑戦する気になったのだという。私は、白紙の状態にもどして診察、検査を進めてみた。いままでの医師の検査や診断を疑ったわけではない。

出典元:安心 出会系

医学は残酷か

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「先生、医学って残酷なものですね」
C子さんは、吐き出すように言った。深いため息がもれ、肩がガクッと落ちた。
結婚して四年、子宝に恵まれない。
私のところで検査や診察を重ねたが、異常は発見されなかった。それならと、ご主人にも協力を求めて調べさせてもらったら、明らかに無精子、つまり、”タネなし”だとわかったのである。
こんな場合、どうしても子どもが欲しいとなれば、第三者の精子をもらって人工授精するほかない。だけどC子さんは、いまのところ、それを受け入れる気にならないという。
「こんなことなら、先生、なんにもわからんままに、”きっとそのうち妊娠する”と信じて毎晩セッセと励んでいたほうが、ずっと楽しかった、夢もあったような気がします・・・」
たしかに医学には、わからなかったことによる悲劇と裏腹に、わかったための悲劇も存在する。私はC子さんの涙を見ながら言葉もなかった。
もし時間がたって、あらためてどうしても子どもが欲しいと思ったら再び相談にくるように、としか言えなかった。
相性が合う結婚相手をみつければ、夫婦間に問題が生じて解決するためにここに書いたような大変なことをしないで済むかもしれません。
近年、医学が進歩したおかげで、かつては子どもをあきらめていた多くの人が子宝に恵まれるようになったのは事実である。
しかし、一方では、技術がすすんだがために、本来ならわからなかった欠陥や病根まで発見されるようになった。それをみつけた以上、医者としては放っておけない。
あらゆる手を打って治療につとめるものだ。C子さんのご主人の場合も諸種の検査をし、いろいろな刺激療法などを試みたけれど、可能性の窓はついに開いてくれなかったわけである。

出典:

ハレモノ扱い

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「おめでとう。とうとう妊娠しましたよ」lそう告げても、K代さんはキョトンとしていた。
こちらが拍子抜けするほど無感動だった。
苦節十年という言葉があるが、実際に結婚十年目で、何年も治療に通っていると九割方あきらめが先に立っていて、妊娠の喜びが少しも実感につながらないものらしい。
「なんかの間違いじゃないんですか。いまさら妊娠なんて、私にそんなこと、あるはずないでしょ」
K代さんは、まるで不貞腐れたようなセリフを残して帰っていった。そして、その日を境にピタッと通院してこなくなった。
会話の中からその人の性格や望みなどを見つけられれば、出会った人は自分にとってどんな人なのか、わかりそうですね。
数週後、気になって連絡をとってみると、原因はすぐわかった。
同居している姑さんが「もう病院には行かんでいい。電車なんかに乗らず、じっと家にいて静養してなさい」と、足止めをしていたのだった。
私は姑さんを電話口に呼び出して説明した。
不妊症患者が妊娠する。それは、いわばホルモン注射や薬によって、無理に受胎させた、ということだ。健康な女性が正常に妊娠するのとは根本的に違う。
だから、妊娠とわかったあとも、引きつづき専門の病院で注射などを続け、だましだまし胎児を育てていかねばならない。
しっかりと根をおろすまでは、まるでガラス細工をお守りするような慎重さが必要なのだ。
「それじゃ、近くの医者にでも時どき連れていきますよ」
「あのね、医者は八百屋さんとは違うんですよ。近くだからいいってもんじゃないんですから、すぐにお連れしてください」


参考:

不妊治療が成功した先

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Y代さんが、まる二年ぶりにやってきた。たしか今年で三十五歳になるはずである。
初診のときは一年近くかかった。治療の甲斐あって、元気な男の子を出産した。結婚して五年目、はじめて授かった子宝であった。
「先生、その節はお世話になりました」あいさつする彼女の血色は、あのころと比べて見違えるほどいい。出産は、なによりも女性を美しくするという証明の見本みたいな肌色である。
Y代さんの来診の目的は”二人目が欲しい”ということだった。待望の子どもができ、その子育てに追われ、ふり回され、熱中するうちに一年、一年半とたった。
もうあきらめかけていたオモチャが手に入り、それとの遊びに没頭していた期間だった、ともいえる。
その間、夫が目立って優しくなった。子どものないころとは打って変わって、帰宅が早くなった。一つの家庭にとって、子どもの存在がどんなに必要なものかが身にしみてわかった。
「子育てが少し楽になって、なんとかもう一人と、欲が出てきたんです。そう、いまの幸せを二倍にしたい、そんな欲ですの」
結婚前に、相性ピッタリの相手を見つければ結婚生活の苦労はもっと減るだろう。
不妊症患者がやっと出産する。そのあと、無排卵が治ってしまい、治療しなくてもつぎつぎと妊娠する場合もある。
だが、Y代さんのように元の木阿弥の状態に戻ってしまうことも珍しくない。だから、また一からホルモン注射などの対策をとらねばならないのである。
「またどんなことでも辛抱します。だから、先生、ぜひよろしくお願いします」
初診のときの半信半疑な状態と違って、Y代さんは生き生きと注文してきた。


出典:結婚相談所 選び方

妊娠だけしたい人の例

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私のクリニックは、不妊症専門である。つまり、長年子宝に恵まれなかった女性が、なんとか出産できるように願って来診するところなのだ。
ところが、ときたま妙な患者が迷いこんでくる。C子さんは、その典型だった。
「あんまり子どもは欲しくないんです。でも、とにかく一度でいいから、なんとか妊娠だけしてみたいんですよ」
あきれた話だ。これでは診察や治療のやり甲斐がない。第一、受胎という神聖なものを何と心得ているのか、と叱りつけたくなってくるではないか。
「子どもがなくても幸せなんです。でも、妊娠したときの喜びについて、本によく書いてるでしょ。あれを私も体験してみたいから・・・」
「妊娠して、あとはどうするつもりなんです」
「それは、また、そのときに考えますから・・・」
私は次第に腹が立ってきた。時計の修繕を注文して”故障がなおったら、またこわすかもわからん”と言っているようなものではないか。
私は、このままお引き取り願うことにした。
自分を作り過ぎずに、素敵なパートナーを見つけよう。
が、C子さんは粘った。なんとしてでも「妊娠できる」ことを証明させてほしい、と食い下がった。
女性にとって妊娠は幸福への一里塚だ、というのが我田引水ながら私の持論である。
その点で、避妊もしていないのに何年も妊娠しないC子さんは、不幸だったといえるのだろう。
「ええ。はじめは意識しなかったですけどネ、六年、七年とたってきて、私は欠陥女かいなと思うようになったんです。

参考: